変形性膝関節症とは!手術やその後のリハビリは?
2016/03/06
歳を重ねるごとに「膝が痛くなる」、「歩くのがつらい」、
自分の母や祖母がそのように訴えているのを聞いたことがありませんか。
日本では急速に高齢社会を迎え、加齢による退行変性疾患である「変形性膝関節症」の羅患率は、急速に増えているそうです。
厚生労働省が、国内での変形性膝関節症患者数を、自覚症状を有する患者数で約1000万人、潜在的な患者数 (X線診断による患者数)で約3000万人と推定しましたのがおよそ8年前。
若干の上限はあろうともこれだけ多くの方が抱えている医療問題なのだ。
そこで今回、変形性膝関節症の病態や、治療方法、術後のリハビリについての知識を共有します。
このような症状で悩んでいる人の参考となれば幸いです。
変形性関節症の詳しい解説はこちらをご覧ください!
→変形性膝関節症(膝OA)とは?治る疾患なの?リハビリテーションの内容は?
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→アルツハイマー型認知症
Contents
変形性膝関節症とは?
変形性膝関節症(以下:膝OA)とは?
膝OAは中・高年に多く認められる、加齢による退行変性疾患である。
発症率は女性が男性の約2倍。
これは閉経後の女性のホルモンの変化と関係しています。
レントゲン上の変化が出現し、約40%に症状があり、約10%が日常生活に支障をきたしている。
【病態】
関節軟骨の変性や摩耗を首座としており、主因は加齢と肥満である。
膝関節にかかる力学的な不均衡の状態が日常的に生じ、関節の構成体に慢性の退行性変化と増殖性変化が起こる。
【症状】
初期には、膝関節のこわばりや、立位や歩き始めの疼痛を生じることが多い。
進行すると、歩行時や階段昇降時などにも持続的な疼痛が生じる。
大部分は内反膝(いわゆるO脚)の変形が生じてくるため、膝の内側に疼痛が生じやすい。
そのような状態が日常化すると、結果として運動量が減少し、体力の減少や、膝を中心とした関節の可動域制限を生じることも少なくない。
簡単にいうと、膝の骨が徐々に擦り減っていき、膝の変形や疼痛が強く出現し、次第に歩行を中心として、日常生活が困難になるということです。
慢性で進行性の疾患のため、自然治癒に期待することは難しく、10年や20年に渡って苦しむ方も少なくないです。
そのため、QOL(クオリティ・オブ・ライフ= 生活の質)を著しく低下させる疾患としても社会的な問題であることも確かです。
次にその治療方法として代表的な手術について紹介します。
変形性膝関節症の手術とは?人工膝関節全置換術(TKA)って?
変形性膝関節症の手術とは?
変形性膝関節症の代表的な手術療法として、「人工膝関節全置換術(total knee arthroplasty)」(以下:TKA)があります。
TKAは重度の関節破壊に対して用いられる手術療法であり、除痛効果が確実で術後早期からの荷重が可能になります。
TKAの種類や手術手技には若干の相違はあるものの、概ね、膝関節屈曲120°を目標とし、実際に獲得が可能となる。
※膝関節屈曲:膝が曲がる角度
※階段の上り下りに必要な膝関節屈曲角度は120°程度と言われる
また、最近では、擦り減った関節面(主には内側)だけを置換する術式である
「人工膝関節単顆置換術(unicompartment knee arthroplasty)」(以下:UKA)も行われている。
全国の人口膝関節症例の一割程度であるが、手術侵襲が少ないことから、術後の疼痛は軽く、術後の機能回復も極めて早いことがメリットである。
→人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法
→全人工膝関節置換術(TKA)のインプラントの種類は?PS型とCR型の違いは?
TKAの入院期間は?
TKAの入院期間は?
病院やドクターの方針、または術後リハビリの進行の程度によって
一概に言えるものでありませんが、
早いところでは2週間程度での退院が可能です。
反対に「みっちりリハビリをして」とお考えであれば、2〜3ヶ月入院するような病院もあります。
一般的な流れとして、
1.受診し、手術日を決定する
2.入院し、術前にあらかじめリハビリや自己血の採取などを行います
3.手術施行
4.翌日よりリハビリテーション開始、荷重や歩行訓練を行う
5.日常生活に必要な歩行や階段昇降など獲得できたら退院
という経過をたどります。
※病院や施設によって大きく異なります。あくまで参考です。
今はインターネットでも年間の患者の手術数や評判、入院日数などを病院のホームページなどでも調べることができます。
ドクターの手術の技量やリハビリテーションの質によって、予後も大きく変わる手術であり、疾患です。
TKAのリハビリテーションは?
TKAのリハビリテーションは?
実際にはどんなことを行うのでしょうか。
【術前】
膝の曲がる伸びる程度はどれほどか、
疼痛の程度はどれほどか、
筋力はどれほどか、
歩行能力、階段昇降能力はどれほどかなどの身体機能の評価を行うとともに、日常での活動度、今後の目標や希望なども聴取します。
また、術後に行うための車椅子の乗り移りの方法や筋力訓練の方法などもあらかじめ指導することが多いです。
【手術日】
全身麻酔の後なので強い運動を行うことはありませんが、
事前に指導した筋力訓練などを早くも開始します。
【手術翌日】
関節可動域訓練、筋力訓練、立ち上がりや歩行訓練を実施します。
個人差はありますが疼痛が強い時期です。
理学療法士などのプロの人たちが可能な限り疼痛が少ない中で、上記のような訓練の内容や方法を実施します。
→人工膝関節全置換術後の日常生活動作(ADL)に必要な膝関節可動域とは?
【それ以降】
回復の程度にも個人差はありますが、その人が日常生活で必要な能力をリハビリテーションで高めていきます。
例えば歩行訓練といっても、平行棒などを用いた歩行訓練から、徐々に歩行器や一本杖、独歩へと段階的に進めていきます。最終的にどのような補助具を使っていくかなどもドクターや理学療法士と話し合いながら決めていきます。
ある程度、必要な能力が備わったところで退院の流れとなることが多いです。
その後の病院や、施設によっては外来でのフォローも可能です。
※あくまで一例です。実際には病院やその施設の指針に従うことになります。
リハビリテーションの中には、構造的に回復が難しく、痛みが取れないという場合などに、 装具療法や足底版療法などを行うことがあります。
特に、TKA後などは、靭帯を切除していることからも、特有の関節の緩さなどが残存することがあります。
それによって、歩行時の膝の動揺が残存するケースも多くあります。
病院にいれば、専門のサポーターなどを処方してもらうことがありますが、市販のものでも、機能を十分に発揮してくれる商品もあります。
変形性膝関節症に対するサポーターの選び方のコツはこちら
→変形性膝関節症にサポーターは効果がある?選び方のコツは?
まとめ
変形性膝関節症について、その病態や手術方法、リハビリについて紹介しました。
一時期流行った膝の痛みに対する飲み薬などのCMは最近見なくなりましたね。
薬で一時的にしのぐか、放置するか、はたまた手術に踏み出すかはそれぞれのライフスタイルにもよるでしょう。
ただし、膝の手術を受けることによって、膝の痛みがなくなった、綺麗にあるけるようになった、人生がもう一度明るくなった、など良くなったという報告が数多くあります。
単純な痛みの除去だけでなく、生活や人生がもう一度大きく変わることが一番大事なことだと思います。
このような方々の参考になれば幸いです。
高齢者に発症しやすい疾患はこちら
→パーキンソン病とは?症状や治療法は?リハビリは何をする?
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