人工股関節全置換術(THA)のリスクとは?脱臼・血栓症・感染に注意!
2016/03/03
変形性股関節症に対する治療法として、人工股関節全置換術が知られています。
毎年、日本でも多くの患者が実施しており、疼痛の減少などから日常生活動作の改善にも期待ができます。
しかしながら、手術ということだけあって、少なからずリスクがあることを知っておかなければなりません。
人工股関節全置換術(Total Hip Arthroplasty:THA)は、変形性関節症をはじめとして、関節リウマチや骨折などによって変形した関節を、金属やポリエチレンなどで作られた人工の関節に入れ替える手術です。
人工股関節全置換術に関する詳しい記事はこちら
→人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法
→人工骨頭置換術とは?人工股関節全置換術との違いは?リハビリや脱臼肢位は?
主要な効果としては除痛がメインですが、脚長差の補正や、関節可動域制限の改善など、構造的な変化から、再び歩行などの日常生活動作の改善が期待できます。
しかしながら、手術を行うというだけに、それなりのリスクがあることも知っておかなければなりません。
人工股関節全置換術後の合併症として、
「脱臼」
「感染」
「血栓症」
が挙げられます。
そこで今回は、人工股関節全置換術に伴うリスクについて、脱臼・血栓症・感染に着目し、それらを解説していきます。
人工膝関節全置換術のリスクに関する記事はこちらから
→変形性膝関節症の手術に伴うリスクは?感染や血栓に注意!
人工股関節全置換術に伴うのリスク① 「脱臼」とは?
人工股関節全置換術(以下:THA)は、稀に関節自体が脱臼することがあるのです。
その割合は、病院によって異なるものの、おおよそ1〜3%程度とされています。
また、初回のTHAでは2〜3%、再置換では4〜6%と、一度脱臼するとより脱臼しやすくなってしまいます。
これは、手術の際に切除した筋肉や靭帯、軟部組織が完全に修復していない状態で、特定の方向に捻ったりした場合に生じるのです。
術後3か月以内では特に脱臼率が高く注意が必要です。
脱臼しやすい特定の方向とは、術式によって異なるものの、多く行なわれている「後方侵入」の場合、
屈曲・内転・内旋方向です。
この方向へ捻ったりすると、脱臼するリスクがあるのです。
人工股関節全置換術の脱臼に関して詳しく知りたい場合はこちらの記事を参照ください!
→人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法
→人工股関節全置換術後の脱臼の原因や時期は?
人工股関節全置換術に伴うのリスク② 「血栓症」とは?
THA後などの手術後には、深部静脈血栓症(以下:DVT)の発症リスクがあります。
DVTとは、下肢の静脈の中で血液が凝固するで血栓が生じることです。
別名「エコノミー症候群」とも言われています。
DVT自体は、かなりの高頻度で認め、TKAでは50~60%、THAでは20~30%程度の人に発症します。
生じた血栓が、血管の中を流れ、肺の動脈に閉塞する病気が「肺塞栓症」と呼ばれ、命に関わる重大な状態に発展してしまうのです。
手術後は、腫脹や不動の影響から、血流が滞りやすい状態が整ってしまうのです。
そのため、術後早期から、足首や足趾を曲げたり伸ばしたりすることで筋肉の働きから血流を良くしたり、弾性ストッキングを着用するなどで予防を行います。
深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)に関する記事はこちら
→エコノミークラス症候群|原因や症状は|ふくらはぎに痛み
人工股関節全置換術に伴うのリスク③ 「感染」とは?
THAなどの手術の際には、稀ではありますが、細菌感染を起こすことがあります。
大きく分けて、早期感染と晩期感染に分類されます。
文字通り、早期感染とは、手術後早期に感染することで、多くは手術時の感染が原因と考えられます。
一方で晩期感染は、術後3か月以上も経過しているにもかかわらず、風邪やがん、糖尿病、エイズ、肝障害など様々な要因から感染を起こすことがあります。
抗生物質などで対処が可能な場合もありますが、感染が重度の場合は、THAの再置換となることがあります。
個人レベルで防ぎようがないかもしれませんが、常に体調を整えることは大事なんですね。
まとめ
今回は、人工股関節全置換術に伴うリスクについて、脱臼・血栓症・感染に着目し、それらを解説しました。
感染に関しては、自己での予防は難しいかもしれませんが、脱臼や、血栓症の管理などは自己でも行えるものです。
せっかく股関節の痛みがなくなったのに、またやり直し….
そんなことにならないように、専門家のアドバイスをしっかりと聞き、適切な管理を行っていきましょう。