脳卒中の後遺症「失行症」とは?その種類やリハビリとは?
「失行症」という言葉を聞いたことがあるでしょうか!?
生活習慣病を起因として発症する、いわゆる“脳卒中”の後遺症として生じる症状です。
正しい理解がなければ、本人も周囲の人間もその対応に困難をきたすことがあります。
“脳卒中”とは、
正確には「脳血管障害」と呼ばれ、
脳梗塞・脳出血・クモ膜下出血などの病態が含まれます。
詳しくはこちら
→脳卒中とは?脳梗塞と脳出血とは違うの?
このような”脳卒中”は、脳の中の血管に異常をきたします。
もともと大脳は、その部位によって支配している機能が異なるため、
脳のどの部位にダメージを受けるか、どちらの脳にダメージを受けるかによってもその症状は大きく変わります。
代表的な後遺症に、
・運動麻痺(一側に生じた場合を片麻痺と言う)
・感覚障害(痺れなどを含む)
・高次脳機能障害(注意・記憶・失語症・失認症etc…)
・筋緊張の異常
・視野障害 etc…
など多岐に渡ります。
→脳卒中の前兆とは|しびれや脱力が生じる!?
→脳出血の好発部位は?部位ごとによる症状の違いはある?
その中でも「失行症」は高次脳機能障害に分類される症状で、
“運動は行えるものの、合目的的な運動が行えない症状”と言えます。
正しい理解がないと、なんで出来ないのかと疑ってしまうような症状が多いため、
周囲の人間の正しい理解が必要となります。
そこで今回は、脳卒中の後遺症である「失行症」について解説します。
Contents
「失行症」とは?具体的な症状とは?
Liepmannによると失行症とは、
「運動可能であるにもかかわらず合目的的な運動が不可能な状態」
と定義されています。
とはいっても良く分からないので、日常生活場面において実際にどのような症状が出現するのでしょうか?
・無意識でやれば行える動作も、指示されて行うと動作が止まる
・包丁や箸などの道具がうまく使えない
・タバコの代わりにライターを加えてしまう
・お茶を入れる順番を間違える etc…
このような例はほんの一例であり、
あらゆる場面で症状が出現します。
周りから見ると、運動はできるのに、
“ぎこちない”
“なんか下手”
“順番が違う”
など、普通の人から見たらなんで出来ないのと言うような症状が出現するのです。
その他の高次脳機能障害に関する知識はこちら
→高次脳機能障害とは|失語・失行・失認|リハビリでの回復は
「失行症」の責任病巣とは?
「失行症」は大脳のどの領域が障害を受けると現れる症状なのでしょうか?
やや専門的な内容になるのですが、これまでに分かっている領域の中は、
両側の大脳半球で生じる可能性はあるのですが、
特に左半球の頭頂葉〜後頭葉が主要な病巣と言われています。
その他、両側の前運動や、両側の頭頂葉後部などが挙げられます。
ただし、以下に記載するように、「失行症」にもいくつかの種類が存在します。
「失行症」の種類とは?
観念失行
観念失行は、一連の動作の順序が正しく行えなくなる症状です。
具体的な例としては、お茶を入れる動作を行う際に、お茶の葉を入れる前にお湯を注いでしまうなどが挙げられます。
観念運動失行
観念運動失行は、一つの動作に対して言語的な命令による遂行や、模倣における遂行が困難になります。
また、物品使用も障害を受けます。
具体的には、敬礼や手を振る動作などの簡単な動作が真似できなかったり、
歯ブラシや髭剃りがうまく顔やその形に合わせることが出来ないなどがあります。
肢節運動失行
肢節運動失行とは、簡単な運動が稚拙になるため運動麻痺と区別がつきにくいが、
コインを掴めなかったり、ボタンが掛けられないといった症状が出現します。
「失行症」のリハビリテーションとは?
「失行症」に関するリハビリテーションでは、
これを行えば改善するといった画期的な方法が確立されていないのが現状です。
これは、失行症という病態が非常に複雑で、解釈の仕方にも多くの選択肢を残しているからだと言われています。
であれば、個々に生じている症状を的確に分析し、
必要な代償手段を獲得することも一つの方法と考えられます。
患者本人、医師、理学療法士や作業療法士または言語療法士などのセラピスト、患者の家族、看護師などが共通の理解を持って治療方針を立案し、展開していく必要があると言えます。
脳卒中の治療に関する記事はこちら
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