脳梗塞の治療法「t-PA」ってどんな薬剤?その適応は?
2018/04/16
脳梗塞は、脳の中の血管が様々な原因で閉塞し、脳の細胞が壊死してしまう恐ろしい病気です。
発見が遅れたり、症状が重いと、重篤な後遺症を残すことは少なくありません。
そんな恐ろしい脳梗塞ですが、「t-PA」と呼ばれる血栓溶解療法があるのをご存知ですか?
「脳梗塞」は、脳血管障害と呼ばれる疾患の中の一つで、他にも「脳出血」や「くも膜下出血」と並ぶ重篤な脳の疾患です。
脳血管障害に関する記事はこちらを参考にしてください!
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脳梗塞によって、脳の細胞に壊死が生じ、時間が経てば経つほどその範囲は広がっていきます。
そのため、早期発見・早期治療を行わなければ、運動麻痺や感覚障害を中心として様々な後遺症が生じます。
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反対に言うと、脳の血管がつまり、脳の組織が壊死する間に、再度血流を再開させることで、症状が軽く済むとも言えます。
そんな働きを担う薬剤が、「t-PA」と呼ばれ、いわゆる血栓溶解療法として存在しているのです。
そこで今回は、脳梗塞の治療法「t-PA」ってどんな薬剤?
そして、その適応などについて解説します。
脳梗塞の治療法「t-PA」ってどんな薬剤?
血栓溶解薬「t-PA」は「プラスミノーゲン・アクチベータ」と呼ばれる薬剤です。
アメリカにおいては1996年に認可されており、「早期の適切な診断と治療で脳梗塞は治せる」とまで言われていました。
遅れること約10年、日本でも2005年10月に認可されました。
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「t-PA」の作用は?
身体の中にはプラスミンという酵素が存在しています。
「t-PA」は、プラスミンの前駆体であるプラスミノーゲンから作られ、血栓を溶かす作用を持ちます。
これまでも血栓溶解薬は投与しても、血栓を溶かす力は十分ではなく、なんとか血栓を溶かそうとして、大量の投与を行うと全身で出血を起こしやすくなります。
そこで登場したのが遺伝子の組み換えにより作ったt-PA製剤です。
t-PAは血栓自体に作用して血栓を溶かすため、血栓溶解療法に適した薬なのです。
しかしながら、現在でも合併症としてん出血の問題は残存しており、投与には十分な注意と適応があります。
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「t-PA」の適応は?
「t-PA」の適応としてあげられるのが、
脳梗塞を発症してから3時間以内であるということです。
それ以上の時間が経っていたら基本的には投与が出来ないそうです。
しかしながら正確には、3時間という中にも、その他の条件に合うかなどの検査が1時間ほどかかるために実際には、発症から2時間以内に病院へ搬送してもらわなければならないなどの条件が厳しいのです。
なぜ、このように条件が厳しいかというと、「強力に血栓を溶かす治療」であるため、裏を返すと「全身に出血が起こる可能性が高い」ということになります。
脳梗塞を発症して少なからず脆くなっている血管では、特に出血が起きやすくなっているのです。
「3時間」というリミットの他にも、
・すでに出血を起こしている
・脳梗塞の程度が重症
・出血傾向のある人
・高齢者
などは、その時点で適応からはずれることが多いようです。
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「t-PA」の実際
上記のように「t-PA」は非常に有効性が高く、また使用方法さえ適切に行えば安全性も高いとされています。
しかしながら、すべての施設で扱えるわけではなく、「t-PA」を使う施設には条件が設けられています。
・CT、MRIが24時間稼働
・集中治療を行うための十分な人員と設備
・脳外科的処置がすぐに行える体制と設備
・急性期脳梗塞入院例が年間100例以上
こうなると、かなり施設自体が限られますよね。
t-PA静注療法実施医療機関検索にて、全国の実施医療機関の検索を行うと約400程度の病院が検索にて、ヒットする状況です。
まとめ
今回は、脳梗塞の治療法である「t-PA」について、その効果や適応などについて解説しました。
かなり有効性の高い治療法であることが言えますが、
制限時間という患者側の要因や、
薬剤を扱っているか、そしてそれを適切に扱える施設かという病院側の問題など、様々な条件がマッチしなければどうやら難しいようですね。
とは言っても、「t-PA」に限らず、大事なことは早期発見・早期治療です。
初期症状や前兆症状を見逃すことなく、確実にキャッチする知識が必要ですね。