「多系統萎縮症」とは?リハビリテーションはなぜ重要?
2017/07/16
この世には、
まだ根治的な治療法が開発されていない“難病”がいくつも存在します。
その中の一つに「多系統萎縮症」があります。
「多系統萎縮症」とは、
神経変性疾患の一つで、難病に指定されています。
主に、小脳または脳幹から脊髄にかけての神経変性を認めることから、
脊髄小脳変性症の一つに分類されます。
その中でも、
・オリーブ橋小脳萎縮症
・線条体黒質変性症
・シャイ・ドレーガー症候群
のそれぞれ異なる症状を呈す三つの総称を多系統萎縮症と呼びます。
→「シャイ・ドレーガー症候群」とは?予後やリハビリテーションの方法とは?
難病に指定されており、根治的な治療法は存在せず、
対症療法が中心です。
ただ、治療法がないからといって何もしないわけではなく、
リハビリテーションによって日常生活動作を維持することが非常に重要な意味を持ちます。
そこで今回は、「多系統萎縮症」における疾患の解説と、リハビリテーションはなぜ重要性について記載します。
「多系統萎縮症」とは?
「多系統萎縮症」は、
神経変性疾患の一つで、脊髄小脳変性症の一つに分類されます。
その中でも、
特に小脳症候を主徴とする「オリーブ橋小脳萎縮症」、
姿勢反射障害や動作緩慢などのパーキンソニズムを主徴とする「線条体黒質変性症」、
起立性低血圧などの自律神経症状を主徴とする「シャイ・ドレーガー症候群」の
3つの疾患を総称し包括する概念として、「多系統萎縮症」が提唱されました。
疫学は?
「多系統萎縮症」は、
50歳以上の発症が多く、性差では男性が女性の2倍となります。
国内での推計患者数は約12,000人とされます。
原因は?
「多系統萎縮症」における詳しい原因は分かっていません。
神経系の変性が生じ、オリゴデンドログリア細胞質内の不溶化したαシヌクレインからなる封入体を有することが特徴とされます。
ほとんどは孤発例で、遺伝性は低いとされています。
症状は?
前述した、3つの疾患ごとに異なる症状が出現します。
【オリーブ橋小脳萎縮症】
・意図した動作を行う際の手足の震え(運動失調)や、呂律の周りにくさ、強調運動障害などの小脳症状を認め、易転倒性などを呈します。
【線条体黒質変性症】
・姿勢反射障害、固縮、動作緩慢、すくみ足といったパーキンソン症候群を主体とし、歩行を中心とした立位バランスが高度に制限されます。
【シャイ・ドレーガー症候群】
・起立性低血圧、排尿・排便障害といった自律神経症状を呈します。
治療は?
「多系統萎縮症」は、難病に指定されており、根治的な治療法は存在しません。
そのため、各々の症状に対する対症療法が中心です。
多くは薬物によって、症状を抑制したり、症状の進行を遅らせることを目的とします。
「多系統萎縮症」にリハビリテーションは必要?その重要性は?
先に述べたように、「多系統萎縮症」に根治的な治療法は存在しません。
もちろん、リハビリテーションを行うことでも神経学的な回復がなされるわけではありません。
しかしながら、「多系統萎縮症」は、
身体の可動性が低下したり、バランス能力が低下したり、歩行を中心とした移動動作や日常生活動作能力が徐々に低下していく慢性疾患です。
薬物治療によって、進行は遅らせることができるものの、
慢性で緩徐に進行することもあり、徐々にその機能は低下を辿ります。
リハビリテーションでは、身体の可動域を維持したり、必要な筋力の回復や、バランス機能の向上など、日常生活では欠かすことのできない身体機能の回復を促します。
また、必要によっては福祉用具などの自助具の検討など、
その人が少しでも長く日常生活が継続できることを支援します。
難病かつ慢性の疾患だからこそ、長期にわたってのリハビリテーションが必要となるのです。
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