大腿骨頭壊死とは?その原因や手術、術後のリハビリは?
2016/03/01
大腿骨頭壊死という疾患をご存知ですか?
数ある股関節の疾患の中でも比較的若くても発症する難治性の疾患です。
「大腿骨頭壊死」とは、股関節の付け根の部分にあたる、大腿骨頭の一部が壊死し、血流が途絶した状態になる疾患です。
突発性に生じることから「突発性大腿骨頭壊死」とも言われています。
骨壊死が生じ始めた時には特別痛みはないのですが、徐々に壊死から圧壊することによって疼痛が生じ、次第に歩行も困難となります。
場合によっては、生涯にわたり痛みが生じない人もいるようですが…
日本全国において、年間の新規発生数は、約2,000人〜3,000人と言われており、その好発年齢は、30歳〜50歳と言われています。
働き盛りの人に発症し、若くても発症する可能性があるのです。
難治性とも言われている「大腿骨頭壊死」の原因や症状、手術方法、術後のリハビリテーションはどのように行っていくのでしょうか?
股関節に生じる疾患の記事はこちら
→大腿骨頸部骨折|手術方法は|術後のリハビリテーション
→変形性股関節症って治るの?原因や症状、治療方法とは?
大腿骨頭壊死の原因は?
大腿骨頭壊死の原因は多くの部分で解明されつつあるようですが、十分に分かっていないのが現状です。
しかしながら、危険因子として、
【ステロイドの長期、大量投与】
ステロイド薬を一日平均で15mg以上程度(代表的なステロイド薬のプレドニゾロン換算)、服用したことがある
【アルコールの大量摂取】
お酒を日本酒で2合以上、毎日飲んでいる
と関連があると言われています。
ただし、アルコールは節制しても良いですが、ステロイドの場合は、何か原疾患の治療として用いられているため、自己判断で中止することも危険です。
大腿骨頭壊死の症状は?
では、大腿骨頭壊死に陥るとどのような症状が生じるのでしょうか?
壊死が発生し始めた時点での症状はありません。
壊死により徐々に大腿骨頭が圧壊することで徐々に疼痛が生じます。
この間、数ヶ月から数年のタイムラグがあるため、発見が遅れてしまうことが多いのです。
具体的な疼痛部位としては、臀部痛が主ですが、中には腰痛や膝痛にまで発展することがあります。
大腿骨頭壊死の治療法は?
大腿骨頭壊死の治療法には、大きく分けて以下の2つです。
・保存療法
・手術療法
いずれも、年齢や重症度、生活活動強度などを考慮して決定されます。
保存療法
壊死の程度や大きさなどから予後が良いと判断された場合に、保存療法が適応されます。
このような場合は、比較的関節可動域が保たれたり、疼痛が少ない場合が多く、生活指導などで日常生活が送れる場合です。
ただし、疼痛が強い場合には、消炎鎮痛剤を使用したり、安静が必要となります。
保存療法で数年は維持できていたが、徐々に変形が進んで手術に移行する、というケースも多いですね。
手術療法
疼痛や変形が強く、日常生活にも困難をきたす場合は、手術療法の適応となります。
手術方法としては、以下の3つが挙げられます。
(1)大腿骨内反骨きり術
大腿骨の転子間部で大腿骨頭及び頸部を内側に骨きりし、傾けたときに、壊死部が内側へ移動することで荷重からはずれる場合に適応があります。
(2)大腿骨回転骨きり術
大腿骨頚部軸を回転軸として大腿骨頭を前方あるいは後方に回転させることで壊死部を荷重部から外し、健常部を新しい荷重部とする方法です。
(3)人工股関節全置換術
上記2つの手術方法は、比較的若年者に適応となるのに比して、この手術は高齢者に適応となります。
大腿骨の大腿骨頭と、骨盤側の臼蓋を人工の関節に置換する手術です。早期から荷重が可能になることがあり、長期の臥床をしないことも高齢者に適応しやすい理由ですが、脱臼などのリスクもあるため、生活指導などが重要です。
→変形性股関節症の手術療法とは?どんな種類や方法がある?
→人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法
→人工骨頭置換術とは?人工股関節全置換術との違いは?リハビリや脱臼肢位は?
大腿骨頭壊死の術後のリハビリテーションは?
大腿骨頭壊死に限ったリハビリテーションの方法があるわけではないですが、リハビリテーションの最大の目的は、日常生活の再獲得です。
大腿骨頭壊死に陥った場合、主には荷重時痛による歩行障害、それによる不動から関節可動域制限や筋力低下が生じている場合が多いです。
手術療法によって、多くの場合、変形などの構造的な問題が解決され、荷重時の疼痛がなくなる場合が多いです。
そのため、リハビリテーションでは、関節可動域の改善や筋力の回復を促し、より良い歩行の獲得を目指します。
また、人工股関節全置換術などを行った場合には脱臼の防止に向けた生活指導なども重要となります。
術後の生活指導やリハビリテーションはこちらを参考にしてください
→人工股関節全置換術[THA]|脱臼のメカニズムと予防方法
→人工骨頭置換術とは?人工股関節全置換術との違いは?リハビリや脱臼肢位は?
まとめ
難治性とも言われている「大腿骨頭壊死」の原因や症状、手術方法、術後のリハビリテーションについて解説しました。
どのような疾患でもそうですが、発見が遅れ放置してしまっては、進行が進むばかりです。
大腿骨頭壊死の場合においても、あまりにも変形が進んでしまえば、手術後の回復の程度にも影響が出てしまいます。
日常生活の中でも股関節に違和感を感じるようであれば、受診などを行うのが賢明かと思います。