「閉じ込め症候群」って何?ALSとの関係は?リハビリテーション方法は?
2018/09/02
「閉じ込め症候群」
という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
物理的に監禁されることではありません。
一体どのような状態を指すもので、どのような疾患なのでしょうか?
「閉じ込め症候群」とは、
“正常な精神が、麻痺した状態の身体の中に閉じ込められた状態”
を指す症候群です。
どういうことかというと、
意識はあり、何か意思を伝えようとしても、
四肢はもちろんのこと口を動かすことも出来ずに周りに働きかけることが出来ない状態なんです。
一方で耳は聞こえるし、目が開いていれば物も見えるし、
正常な判断をすることも可能です。
ただただ意思表示の方法が欠如しているのです。
まるで、身体の中に精神が閉じ込められているように見えるため、
「閉じ込め症候群」または、「rocked in syndrome」などと呼ばれるのです。
なぜ、このような状態に陥るのか?
その原因や改善に際してリハビリテーションの方法などを解説します。
「閉じ込め症候群」の原因は?
「閉じ込め症候群」の多くは、
四肢の運動を司る脳部位の障害が原因となります。
脳梗塞や脳腫瘍を主たる原因として、
主に脳幹部の広範囲な損傷によって生じます。
脳幹と呼ばれる部位は、ちょうど首と頭の間に存在し、脊髄が上方に延長している部分にあたります。
この部位には、四肢の運動を司る運動路が走行しており、この経路が広範囲に及んで障害を受けることで生じるのです。
脳梗塞や脳腫瘍の他の原因として、
・重症筋無力症
・ギランバレー症候群
・筋萎縮性側索硬化症(ALS)
などによっても生じるます。
なお、閉じ込め症候群となっても、垂直眼球運動と瞬きだけは障害されずに機能が残存します。
筋萎縮性側索硬化症(ALS)とは?
特に筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、閉じ込め症候群の代表的な疾患であり、
あの「アイスバケツチャレンジ」でも有名になりましたね。
ALSは、自己免疫の異常によって生じるものの、その原因不明であります。
運動神経が選択的に障害されるため、
四肢はもちろんのこと、嚥下に関係する筋肉や、
呼吸筋にまで麻痺が進行します。
最終的には、呼吸筋麻痺によって死亡しますが、
人によってもその進行の速さは様々です。
根治的な治療方法はなく、
投薬によってごく軽度の進行の遅延が可能であります。
多くの研究機関によって、薬の開発や治験が進められている段階であると言えます。
「閉じ込め症候群」のリハビリテーションは?
前述したALSによる閉じ込め症候群は、
現在は完治する病ではありません。
当然ながら、筋肉の拘縮(固まる)が生じないように関節を動かすなどのリハビリや、
呼吸筋力が低下しないように呼吸筋の筋力訓練などは必要となります。
その中でも非常に重きを置かれるのは、
コミュニケーション手段の確立です。
完全に麻痺した身体でも、瞬きは可能であるため、
瞬きの回数や強さ、眼球の挙上などによって意思疎通を図る手段もあります。
また、50音表の作成や、訴えを予測した表などを用いたコミュニケーションなども有効であり、
これらの代替コミュニケーションを確立することこそが重要なリハビリテーションとなるのです。
さらに最近では、
脳の酸素濃度を測定する非侵襲的な脳とコンピューター間インターフェース(Brain-Computer Interface、BCI)を用いて患者との意思の疎通を図る方法なども報告されています。
まとめ
今回は、「閉じ込め症候群」の原因や改善に際してリハビリテーションの方法などを解説しました。
精神が正常であるが故に、
歯がゆく、そして伝わらない苦痛は想像を絶するものがあります。
どんな手段でも、意思疎通が行えることは絶大な安心と希望を見いだすことにつながると考えています。