大腿骨頸部骨折|手術方法は|術後のリハビリテーション
2016/03/09
大腿骨頸部骨折という疾患をご存知でしょうか!?
高齢者の下肢骨折において、最も多い骨折と言われています。
厚生労働省によると、平成21年において、65歳以上の人口が総人口に占める割合は、22.7%であり、2055年には40.5%に達することが予想されています。
このように高齢化率上昇に伴う転倒や骨折の増加は社会的に非常に大きな問題です。
高齢者の下肢骨折の多くは、転倒を契機にしていることが多く、その中でも大腿骨頸部骨折は最大の頻度を誇ります。
ある報告によると、1987年に53,200人であったものが2007年には148,100人と20年間で約2.8倍になったと言われている。
高齢者は、転倒のリスクが高まるだけでなく、基礎疾患として骨粗鬆症などを有しており、70歳以上になると指数関数的に増加するとも言われています。
そこで今回は、大腿骨頸部骨折について、その危険因子や手術法、術後のリハビリテーションなどを紹介します。
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Contents
大腿骨頸部骨折とは
大腿骨頸部骨折とは、大腿骨の最も近位の部分で、いわゆる足の付け根の部分です。
大腿骨は人体で最大の大きさと強度を有していますが、大腿骨の頸部というのは、股関節と接続する骨頭と骨幹をつなぐ脆弱な部分なのです。
とりわけ剪断力に弱く、側方や後方への転倒による衝撃によって容易に骨折を生じます。
大腿骨頸部骨折の重症度分類はこちら
→大腿骨頸部骨折の診断や分類方法は?Garden分類とは?
大腿骨頸部骨折の危険因子
大腿骨頸部骨折の最大の危険因子は、「骨粗鬆症」です。
大腿骨の近位の骨密度が、1SD低下すると、大腿骨頸部骨折が生じる相対的危険度は2.6倍にもなるそうです。
また、脳卒中患者における大腿骨頸部骨折の発生率は一般の高齢者の2〜4倍になると言われています。
特に、麻痺側の骨折が圧倒的に多く、ただでさえ、麻痺側への転倒がしやすい上に、効果的な受け身などがとれないことも大きく影響しています。
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大腿骨頸部骨折の手術療法
大腿骨頸部骨折は、以下の点で骨癒合が他の部位に比較して遅延します。
・骨折線が垂直方向で剪断力が働きやすい
・関節内骨折で滑液が流入する
・骨折によって血流が途絶する
そのため、手術療法が選択されやすいのです。
行われる方法は大きく分けて以下の二つです。
・骨接合術
・人工骨頭置換術
骨接合術とは、スクリューやピンを内固定材料として使用し、骨を接合して固定します。
(画像A〜C)
一方で、人工骨頭置換術とは、骨頭を人工のものと入れ替えて使用する方法です。
(画像D)
年齢や生活スタイルなども考慮しますが、わが国では、人工骨頭置換術の割合が多いとされています。
大腿骨頸部骨折術後のリハビリテーション
大腿骨頸部骨折後のリハビリテーションの目的は以下のようです。
疼痛の軽減
手術侵襲による炎症症状、さらには、筋の防御的な反応による二次的な障害が生じることもあります。
リハビリテーションでは、主に物理療法を用いてリラクゼーションや血流のコントロールを図ることで疼痛の軽減を図ります。
関節拘縮の予防や改善
骨折後や手術後は、それらの侵襲に伴う軟部組織の破壊が起こります。
その後、自然に修復に向かうのですが、その際に瘢痕形成と呼ばれる創部の結合が起きます。
それらが過剰となると、関節が硬くなって動かなくなるなどの症状が生じてしまいます。
これらに対しては、関節可動域訓練などを実施する中で、徒手的または、運動を介して伸張性を引き出し改善を目指します。
筋力維持や強化
術後は、不動や疼痛に伴い筋力低下や出力不全が生じます。
特に術創付近である股関節は、とりわけ筋力発揮が困難となります。
これには筋にも直接的な手術侵襲が加わっていたりするためです。
それに対して手術後早期より、筋力訓練を行います。
必ずしも股関節周囲だけの筋力が低下するわけではないので、状況を適切に評価してもらい、筋力訓練に励みましょう。
日常生活活動動作の改善
上記のような、要素的な機能の改善によって、徐々に歩行を始めとした日常生活動作能力も回復してきます。
特に術後早期からの起立訓練や歩行訓練などは、全身的な耐久性や筋力、循環などの面からも推奨されています。
大腿骨頸部骨折に対するリハビリテーションの詳しい記事はこちらもどうぞ
→大腿骨頸部骨折の手術後のリハビリテーションの内容は?期間はどのくらい?
まとめ
大腿骨頸部骨折について、その危険因子や手術法、術後のリハビリテーションなどを紹介しました。
いかがでしたでしょうか。
身近で受傷された経験を持つ人もいるのではないでしょうか。
それだけ最近では頻度も増えており、日本で出動する救急車に乗っている患者も大腿骨頸部骨折が最も多いそうです。
リハビリテーションに関してですが、代表的な問題や訓練を紹介しましたが、専門である理学療法士とともに適切な訓練を行っていきましょう。
高齢者が生じやすい疾患はこちら
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