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「プッシャー症候群」とは?責任病巣や評価法、リハビリテーションとは?

      2017/04/19

リハビリテーションに従事する、

理学療法士や作業療法士などの専門知識を持っている人でもその治療に苦渋する症状の一つに、

「プッシャー症候群(Pusher Syndrome)」があります。

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「プッシャー症候群」は、

脳卒中などを罹患し、とりわけ急性期に多く認められる症状です。

 

Pushing現象とも呼ばれますが、

正確には、「Contraversive Pushing」と呼ばれます。

 

この症状は、

“損傷を受けていない非麻痺側の上下肢で自分の身体を麻痺側へ押していく現象”

Davies PM,2005

と定義されます。

 

Pushingの名の通り、

床を押してしまう現象なのですが、

なぜそのような現象が出現するのか諸説ありますが、

明確に説明できるものはないのが現状です。

(諸説には、”体軸のズレ”、”体軸失行”などが言われています)

 

また、本人からしてみれば(おそらく)その状態を正中として認識しているために、

他動的にまっすぐに修正しようとすると、より強く押し返してしまうのです。

 

さらに、半側空間無視(USN)や注意障害、重度の運動や感覚麻痺などの症状が合併していることも、さらにこの病態を理解することを困難にしているのです。

今回は、「プッシャー症候群」の責任病巣や評価法、リハビリテーションなどについて解説します。

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Contents

「プッシャー症候群」とは?

もう一度、簡単に説明すると、

「プッシャー症候群」とは、

“損傷を受けていない非麻痺側の上下肢で自分の身体を麻痺側へ押していく現象(Davies PM,2005)”

です。

脳卒中片麻痺の5~25%に出現すると報告されています。(網本 2002)

 

周囲から見ると明らかに非麻痺側の上下肢で床を押して、姿勢が傾いているのに、

他動的に姿勢を修正しようとすると、さらに強く押し返してしまうのです。

 

いくつかの特徴として、

・半側空間無視を伴う左片麻痺に多い
・非麻痺側への体重移動が難しい

などが挙げられます。

 

ただし、必ずしもこれが「プッシャー症候群」という明確な基準はなく、

急性期を脱することである程度症状が改善するものや、

そうでないものまでさまざまであり、その判断も難しいところがあります。

 

 

「プッシャー症候群」の評価方法は?

「プッシャー症候群」の明確な診断基準はないものの、

客観的な評価基準の代表的なものとして、

“Clinical Assessment Scale for Contraversive Pushing (SCP) “があります。

 

日本のみならず世界的にも使われている評価法であります。

 

 

「プッシャー症候群」の責任病巣は?

「プッシャー症候群」の責任病巣は依然として、明確なことは分かっていません。

 

ただし、以下の部位に関しては、姿勢の定位に関与する部位とされており、

「プッシャー症候群」の関与が疑われます。

・内包Pedersen et al 1996)
・補足運動野,上頭頂小葉,淡蒼球
(Reding et al 1997)
・視床後外側部(Karnath et al 2000)
視床後外側部しかも広範囲のもの(Karnath 2000)
・島後部、中心後回(
Johannsen 2006)

などが報告されています。

 

 

「プッシャー症候群」のリハビリテーションは?

「プッシャー症候群」のリハビリテーションは、

当たり前ですが、ただただ姿勢を修正すれば良いというものではありません。

むしろそのようなアプローチは、

さらなる「プッシャー症候群」を助長してしまう可能性があります。

 

かといって、必ずしもすべての人に当てはまるアプローチが報告されているわけでもありません。

これには、個人によって損傷している部位や大きさ、合併している症状などが異なるためと思われます。

 

その中でも、

治療の手がかりとなるのは、

①視覚的な手がかり
②非麻痺の体性感覚

がキーワードとなりそうです。

 

①:通常「プッシャー症候群」を呈している人でも、

比較的視覚による垂直の判断は保たれていることが多いと言われています。

 

そのため、視覚による姿勢のずれを確認したり(ミラーフィードバックなど)、

点滴棒などの垂直の指標となるものを姿勢定位の手がかりにすることが有効と考えられます。

ただし、人はこのような視覚のみで姿勢を保っているわけではありません。

 

②:非麻痺側の体性感覚は保たれているため、

前述の視覚と、体性感覚との統合を図ることが重要と考えられます。

 

例えば、先ほどの点滴棒を、非麻痺側方向へゆっくり移動させてみて、

視覚を含めた頭部の正中保持とともに、非麻痺側への体重移動を行う中で、

押さなくても姿勢を保持できることを知覚させます。

 

これこそが、能動的な移動に伴う、視覚と体性感覚の統合であり、

このような押さなくても姿勢を保持できる経験を繰り返し行い

安心して動けることを本人に知覚してもらうことが、「プッシャー症候群」の一つのアプローチ方法と言えるでしょう。

 

 

まとめ

今回は、「プッシャー症候群」の責任病巣や評価法、リハビリテーションなどについて解説しました。

リハビリテーションのほんの一例を紹介しましたが、

何度もいうようにすべての人に当てはまる治療はないと思われます。

仮説と検証作業を繰り返しながら、その人に最適な治療を見つけ出していく必要があります。

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