高次脳機能障害とは|失語・失行・失認|リハビリでの回復は
2017/01/15
脳卒中による障害は、運動障害や感覚障害に代表され、日常生活活動に大きな支障をきたすことは一般に知られています。
しかしながら、脳卒中の後遺症として、運動障害や感覚障害がなくとも、日常生活活動が困難になることも稀ではありません。
その最たる原因としてあげられるのが「高次脳機能障害」です。
「高次脳機能障害」とは、文字通り、高次な脳の機能を指します。
運動や感覚などは比較的低次な脳の機能であり、人だけでなく、魚類や爬虫類なども当たり前のように持つ、原始的な機能です。
高次脳機能とは、理性や言語、記憶、判断、注意などなど、大脳皮質を発達させてきたヒト特有の機能なのです。
ただし、認知症とは区別され、単なる記憶障害だけでなく、脳の障害部位に応じた様々な障害が生じるのです。
事実、これらの機能が失われることによって、若年者といえど、日常生活が自立して行えなくなる例は、決して少なくありません。
そこで今回は、脳卒中の後遺症の一つである高次脳機能障害についてリハビリでの回復の是非などに関しても解説します。
脳卒中に関する記事はこちら
→脳卒中とは?脳梗塞と脳出血とは違うの?
→脳卒中片麻痺|右片麻痺と左片麻痺の違いは!?
高次脳機能障害とは?
高次脳機能障害は、脳卒中の後遺症だけでなく、頭部外傷や脳腫瘍などによっても、脳の表面を覆う繊維である、大脳皮質が損傷された場合に障害されることがあります。
運動能力もあり、感覚も正常なのに、なぜか、行為が遂行できない、言ったことが伝わらない、性格や感情の変化が起きる、物を見落とすなど、その障害は多岐に渡ります。
「あれ、なんか変だな?」
と周囲が違和感を感じるものの、その理由は分からずに、「変な人」のレッテルを貼られ、社会復帰できない例もあります。
具体的な高次脳機能障害の分類には、
・失語
・失行
・失認
・記憶障害
・注意障害
・遂行機能障害
・半側空間無視
などが挙げられます。
以下に代表的な障害である、失語・失行・失認について解説します。
半側空間無視に関する情報はこちら
→脳卒中の後遺症「半側空間無視」とは?リハビリ方法は?
失語
失語とは、大脳の言語機能の中枢の損傷で生じます。
話すための構音器官の器質的な障害はないものの、「話す」「聞く」「読む」「理解」するなどの機能が損傷されます。
具体的には、大きく分類して以下の二つの障害があります。
・運動性失語:話すための器官は障害されておらず、記憶や理解もしているし、頭の中で何を話そうかも分かっているが、言葉が出てこず、たどたどしくなる、非流暢になる。
・感覚性失語:発話は流暢であるにもかかわらず、言語の聴覚的な理解が著しく障害され、言葉で伝えたことがわからない状態。
上記の片方だけの障害や、いずれも障害される場合など、損傷範囲によって様々です。
失行
失行(しっこう)とは、運動麻痺や感覚障害などがなく、行うべき行動を理解しているにもかかわらず、目的にあった行動が的確に行えなくなることです。
失行は、その症状から、幾つかに分類されます。
・肢節運動失行:単純な動作が拙劣になる。例えば、硬貨をつまめない、ボタンをかけれないなどの症状があるが、運動障害とは区別されます。
・観念運動失行:簡単な動作ができなくなることです。例えば、敬礼やパントマイムなど。
・観念失行:個々の運動はできるが、複雑な一連の運動連鎖が必要な行為が障害されることです。例えば、お茶を沸かしてコップに注ぐ、タバコに火をつけるなどの一連の行為の手順がバラバラになって、目的を遂行しきれないこと。
失行は、運動障害と区別されるべき症状ですが、素人目にはなぜ出来ないのかが理解できない場合が多いです。
また、指示された動作や行為でなく、意図せず反射的・自発的に行った場合には、すんなりできてしまうことが多いのです。
失認
失認とは、視覚や聴覚、触覚などの機能に障害がないにもかかわらず、対象物や自己の身体の区別や認知ができなくなることです。
障害を受ける感覚の種類によって、
・視覚失認
・聴覚失認
・触覚失認
などに分類されます。
より狭義の分類には、身体失認(自分の身体が認識できない)や相貌失認(よく知っている人の顔が分からない)などがありますが、列挙しきれないほど、たくさんの失認が確認されています。
脳卒中に関する記事はこちら
→脳出血の好発部位は?部位ごとによる症状の違いはある?
→脳卒中の前兆とは|しびれや脱力が生じる!?
高次脳機能障害のリハビリテーションは?
高次脳機能障害は存在する場合は、急性期の脳卒中の治療などと合わせて、病院などでリハビリテーションを受けます。
その症状や病態に応じた治療プログラムが立案されます。
高次脳機能障害は、急性期の脳梗塞や脳出血の改善に伴って消失する場合も少なくありません。
ただし、数週間、数ヶ月と残存する場合には、完治するというよりも残存してしまう場合が多いとされています。
当然、リハビリテーションの中で脳の可塑性をも考慮した訓練プログラムにより、改善する例はありますが、生じた症状を代償する手段や、家族の理解を得ながら共に生活していくための方法などを模索する手段も講じられます。
言い換えれば、高次脳機能とうまく付き合っていくことです。
これには、病院内のリハビリテーションだけでなく、社会復帰目的として、地域をも含めた障害者自立支援の施設や取り組みを知ること、利用することも重要なことなのです。
脳卒中後のリハビリに関する記事はこちら
→脳卒中片麻痺|装具の種類や適応は?
→脳卒中後遺症にボツリヌス療法|その効果や料金は?
まとめ
今回は、脳卒中の後遺症の一つである高次脳機能障害についてリハビリでの回復の是非などに関しても解説しました。
脳卒中の後遺症の一つとして知られる高次脳機能障害ですが、高齢者だけでなく、若年者にも生じる可能性は多分に存在します。
→若年性脳梗塞の原因と症状は?若くても発症する?
その場合は、日常生活だけでなく、社会復帰なども含めた多様な問題へと発展するのです。
周囲の人が正しい理解を持ち、その行動を理解することが重要となります。
医師だけでなく、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士などの専門家と共に、そのための手段を模索し、検討していくことが必要となるのです。