脳卒中後遺症である片麻痺歩行の特徴って…?
脳卒中による後遺症で最も代表的な症状といえば、運動麻痺を主体とした片麻痺です。
重症度や時期によってもその症状は千差万別ですが、歩行などにおいて、幾つか定型ともいえる特徴的なパターンがあるのです。
脳卒中とは、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血の総称であり、正式には脳血管障害と呼ばれています。
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多種多様な症状がある中で、運動麻痺や感覚障害を主体とした片麻痺は代表的な後遺症と言えるでしょう。
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片麻痺とは、身体の半身の麻痺であり、運動のみならず、感覚障害などを併発します。
その症状は、障害の部位や大きさなどによって千差万別ですが、とりわけ日常動作における動作障害が自宅復帰を妨げます。
その中でも歩行の獲得は、まさしく主要課題と言っても過言ではなく、多くの方がリハビリテーションでのゴールと位置付けています。
片麻痺になると、その特徴的な症状から、ある程度定型ともいえる動作パターンを呈し、歩行においても例外ではありません。
そこで今回は、片麻痺者が陥りやすい歩行の特徴について解説します。
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片麻痺において生じる症状は?
歩行の特徴を解説する前に、片麻痺になった際に生じやすい症状をまとめます。
大きく分けて陽性兆候と陰性兆候に分類されます。
陽性兆候
陽性兆候とは、正常では観察されない現象が出現することです。
・共同運動
・連合反応
・腱反射の亢進
いずれも筋肉が不随意かつ、反射的に収縮してしまう状態と言えるでしょう。
ウェルニッケマン肢位と呼ばれる特徴的な姿勢を呈すこともあります。
片麻痺に特徴的な姿勢はこちら
→片麻痺|姿勢の特徴とは!?
陰性兆候
陽性兆候とは、正常では観察される現象の消失です。
・筋緊張の低下
・立ち直り反応の低下
などがあります。
身体を支持するための筋緊張が低下し、かつ姿勢を保つための立ち直り反応が減弱してしまいます。
歩行だけでなく、立っているだけでもバランスを崩しやすくなってしまう状態です。
片麻痺歩行の特徴とは?
片麻痺となると、上記の陽性兆候や陰性兆候など影響し、ある程度似たような定型パターンを示すことがあります。
しかしながら、その現象の原因を特定するには、このような機能的な要素だけでなく、筋骨格系などの構造的な要素、恐怖や嫌悪などの情動的な要素、床の形状などの環境的な要素など、様々な要因が複雑かつ相互的に関連しているのです。
そのため、下記に挙げるのは、主に現象のレベルであるとともに、その原因に関しては、あくまで一つの要因として記載する。
ぶん回し歩行
ぶん回し歩行は、下肢を振り出す際に、麻痺側下肢を大きく外からぶん回すように歩く歩行です。
まっすぐに麻痺側下肢を振り出すことができず、床面に引っかかってしまうために、体幹を非麻痺側に倒しながら大きくぶん回すのです。
多くの場合、痙性が強く十分に関節が動かない場合、もしくは足の背屈不全や随意性の低下から下肢自体での振り出しが行えない場合に出現することがあります。
反張膝
反張膝は、立脚の際に麻痺側の膝関節が逆くの字様に後方へ引けながら支持する歩行です。
この時は膝だけでなく、骨盤帯なども同時に後方へ引けています。
膝折れなどがあり十分に下肢で支持できない場合や、下腿三頭筋の痙縮などの影響で下腿が後方へ引けてしまう場合、体幹が鉛直位で保持できず前傾してしまう場合などに生じることがあります。
鶏状歩行(下垂足)
鶏状歩行は、下肢を振り出す際に、膝を高く持ち上げる歩行です。
足関節の背屈不全によって、つま先が下垂してしまうため、床面との引っ掛らないようにするための代償であります。
尖足歩行
尖足歩行は、下肢を接地する際につま先から接地する歩行です。
この際には、尖足だけでなく、内反を伴うことが多いです。
立脚、遊脚問わず、主に下腿三頭筋の筋緊張が亢進するために生じる現象です。
このような内反や尖足があるとぶん回しなどの代償を伴うこともあります。
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まとめ
今回は、片麻痺者が陥りやすい歩行の特徴について解説しました。
ごくごく一部のみの紹介でしたが、どれか一つが生じるわけでもなく、一つの機能障害によって、様々な歩行障害が生じるのです。
また、必ずしもこのように名称がつけられるほど綺麗に現象として現れるわけでもありません。
機能障害、心理状態、環境面など様々な要因を考慮しながら、その原因を模索し、改善への糸口を見つけていけると良いですね。