ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)の病態やリハビリテーションとは?
2016/09/22
「ワレンベルグ症候群(Wallenberg syndrome)」とは、
“延髄の外側の(脳)梗塞によって生じる特異的な症状を呈す疾患”です。
予後は比較的良好とされるも、嚥下障害を中心として多彩な臨床症状を呈します。
「ワレンベルグ症候群(Wallenberg syndrome)」は、
脳幹障害の中でも、“延髄の外側の(脳)梗塞によって生じる症候群”です。
主として、後下小脳動脈か椎骨動脈、もしくは脳底動脈の閉塞によって生じるとされており、
高血圧を有する50歳代の男性に好発すると言われています。
運動麻痺は比較的軽度であるものの、
嚥下障害や、起立時の眩暈や嘔吐、障害側の失調症状、バランス障害などなど…
非常に多彩な症状を呈します。
そこで今回は、ワレンベルグ症候群(延髄外側症候群)の病態やリハビリテーションなどを解説します。
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ワレンベルグ症候群とは?
「ワレンベルグ症候群(Wallenberg syndrome)」は、
1895年に”Wallenberg”によって報告された、延髄外側の梗塞で生じる疾患です。
高血圧を呈する50歳代の男性に好発します。
健康な成人などでも、運動負荷後には、一過性のワレンベルク症状が出現することもあるようで、
首のマッサージなどでも症状が発現することもあるそうです。
ワレンベルグ症候群の病態は?
後下小脳動脈、椎骨動脈、もしくは脳底動脈などの閉塞によって生じますが、
動脈解離などを合併している場合が多いとされています。
延髄の外側を通過する神経路の機能障害が生じますが、
具体的には、
・前庭脊髄路
・脊髄小脳路
・脊髄視床路
・三叉神経脊髄路
などが障害を受けます。
これらの有する機能が低下または消失することで以下のような症状が生じるのです。
ワレンベルグ症候群の症状は?
ワレンベルグ症候群では、以下のような特徴的で多彩な臨床症状を呈します。
(ただし、個人差や僅かな障害部位の差で症状の出方は異なります)
【典型的な症状】
全身に生じる症状
・嘔吐や悪心
・回転性めまい
・lateropulsion(ラテロパルジョン):障害側に傾く
障害側と同側に生じる症状
・眼振
・球麻痺(嚥下障害、構音障害、嗄声)
・カーテン徴候
・味覚障害
・上下肢の小脳症状
・ホルネル症候群
・顔面の温痛覚障害
障害側と対側に生じる症状
・体幹、上下肢の温痛覚障害
多くは、嚥下に関する障害が中心であり、四肢の運動麻痺は軽度です。
しかしながら、眩暈や嘔吐、lateropulsionに代表されるバランス障害によって、
離床が困難となり、全身的な機能回復が遅延することも少なくありません。
ワレンベルグ症候群の予後は?
ワレンベルグ症候群に限らず、
脳卒中などによって損傷された場合の予後は、
その損傷の大きさや位置に深く関係します。
ワレンベルグ症候群に限って言えば、
めまいや嘔吐などは、離床などを行う中で、
徐々に回復傾向にあり、lateropulsionなどの姿勢障害も以下のようなリハビリテーションの中で徐々に軽減する場合が多いようです。
ワレンベルグ症候群のリハビリテーションは?
ワレンベルグ症候群のリハビリテーションに関して、
明確な治療方法が確立されていないのが現状です。
特に日常生活動作に直結する姿勢障害であるlateropulsionは前庭機能の障害に起因します。
同時に、視覚的な鉛直の判断も低下しているとされるワレンベルグ症候群患者は、
固有感覚や体性感覚を利用(代償)することで再び姿勢調節能力を獲得出来ると考えられます。
よって、体性感覚情報を指標とした座位や立位でのバランス訓練を進める必要があります。
さらに、輪状咽頭筋や上部食道括約筋などの機能障害に対して、
嚥下リハビリテーションとして、バルーン法などが適応となります。
多彩な臨床症状が存在する中で、離床自体を阻害する因子も少なくなく、
経過の中で不動による廃用症候群などを生じさせないように活動量を維持することも重要です。
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