脳卒中片麻痺に合併しやすい「肩関節亜脱臼」とは?原因や治療法はある?
脳卒中を患うと、運動麻痺をはじめとした代表的な後遺症以外にも幾つかの合併症が生じることが知られています。
その中でも「肩関節亜脱臼」は比較的合併しやすい症状として知られています。
脳卒中とは、正式な名称では脳血管障害と言います。
脳血管障害と一概に行っても、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などに細分化されます。
→脳卒中とは?脳梗塞と脳出血とは違うの?
各々に総じて問題となるのは、いわゆる合併症や後遺症です。
代表的な脳血管障害の後遺症には、片麻痺とも言われる典型的な運動麻痺や感覚障害、高次脳機能障害などが知られています。
脳卒中の合併症や後遺症に関して詳しい記事はこちらを参照ください。
→脳卒中の合併症とは?怪我や痛みなど…!リハビリの制限因子になる!?
→片麻痺|脳卒中後遺症|痺れの原因は?治る?
その中でも、比較的生じやすい合併症の一つに「肩関節の亜脱臼」があります。
文字通り、麻痺側の肩関節に亜脱臼が生じるのです。
運動制限だけでなく、疼痛などが大きな問題となり、しばしばQOL(quality of life:生活の質)の低下を招きます。
リハビリテーションの対象でもあるこの症状ですが、一体どんな原因や治療法があるのでしょうか?
そこで今回は、脳卒中片麻痺に合併しやすい「肩関節亜脱臼」についてまとめます。
脳卒中に関する記事はこちらもご参照ください。
→脳卒中片麻痺|右片麻痺と左片麻痺の違いは!?
→脳卒中の前兆とは|しびれや脱力が生じる!?
肩関節亜脱臼とは?
肩関節の亜脱臼とは、肩関節を構成する上腕骨と肩甲骨、鎖骨の中でも、上腕骨が下方に引き下がり上腕骨と鎖骨の間が(亜)脱臼している状態です。
一般的に一横指以上の隙間があることで評価されています。
重症度などの差はありますが、片麻痺患者の中でも30〜50%程度に認められるそうです。
亜脱臼そのものが問題になるのではなく、そのような関節の不適合が存在する中での過度な使用によって、関節自体が傷つき、損傷を起こすのです。
一度そのような状態になると、肩を動かす、または安静にしていても強い疼痛が生じることがあります。
結果として、上肢を使用することも嫌になり、全く使えない、使わない手になってしまう危険性もあるのです。
原因は?
肩関節亜脱臼の原因には、幾つかの要因が挙げられますが、最も多いとされる原因は、
「【弛緩性麻痺】に伴う、下方への牽引」です。
もともと、肩関節というのは、回旋筋腱板(ローテーターカフ)と呼ばれる小さな筋肉によって、重力で下に落ちないように関節内に保持してくれているのです。
脳卒中片麻痺の代表的な後遺症でもある「運動麻痺」はこれらの筋肉の緊張を低下(弛緩)させてしまうことがあります。
この場合、上腕の重さを筋で支えることが出来ずに亜脱臼状態となってしまうのです。
しかしながら、必ずしも、この筋だけの問題だけでなく、反対に大胸筋や上腕二頭筋と呼ばれる筋の緊張による牽引や、肩甲骨自体の位置関係の変化、関節方や靱帯などの弛緩など複雑な要因が幾重にも絡んでいる場合が多いのです。
※脳卒中は再発に注意が必要な疾患です
→脳卒中は再発しやすい?再発率は?予防や対策は?
治療法やリハビリテーションは?
肩関節亜脱臼に対する治療は、主にリハビリテーションが中心です。
弛緩化した筋肉(筋力や筋張力)の回復を目的に低負荷での筋力訓練を行います。
しかしながら、ただでさえ、麻痺のある側の上肢なので自らで運動を行うことが難しいこともあるでしょう。
その場合には、TENSなどと呼ばれる電気刺激を用いた運動などの有効性も報告されています。
また、亜脱臼が生じている状態での過度の運動こそが不要な疼痛などを招くため、必要に応じてアームスリングを用いたり、適切な動作方法の指導などを行います。
「痛いから動かさない!」
となってしまうと、徐々に関節が拘縮(固まる)してしまうので、理学療法士や作業療法士の指導・誘導の元、適切な運動を継続していく必要があるのです。
脳卒中のリハビリテーションに関する記事はこちら
→脳卒中片麻痺|装具の種類や適応は?
→高次脳機能障害とは|失語・失行・失認|リハビリでの回復は
→脳卒中の後遺症「半側空間無視」とは?リハビリ方法は?
まとめ
今回は、脳卒中片麻痺に合併しやすい「肩関節亜脱臼」についてまとめました。
「動かせるうちは、とにかく頑張って動かすが、徐々に痛くなって動かさなくなり、拘縮が生じる」
これこそが最も陥ってはいけない負の連鎖なので、これを断ち切るためにも適切な指導のもと、改善に取り組んでいくようにしましょう!