脳卒中片麻痺の回復過程とは?プラトー(天井)はあるのか?
脳卒中の後遺症として生じる片麻痺は、
運動麻痺や感覚障害をはじめとして、様々な症状を発症し、日常生活動作を制限します。
現在では、少しでも後遺症を残さないように急性期からリハビリテーション医療が展開されています。
脳卒中とは、
「脳梗塞」
「脳出血」
「くも膜下出血」
の総称であり、いずれの脳の損傷部位に応じて様々な症状が生じます。
→脳卒中とは?脳梗塞と脳出血とは違うの?
→くも膜下出血とは?前兆症状はあるの?原因や後遺症は?
その中でも、運動麻痺や感覚障害をはじめとして、
特有の姿勢や後遺症を残す病態を“片麻痺”などとも言います。
発症後より、少しでも後遺症を残さないようにと、急性期から様々なリハビリテーションが展開されています。
→片麻痺|姿勢の特徴とは!?
→脳卒中片麻痺|右片麻痺と左片麻痺の違いは!?
これらのリハビリテーションで麻痺は治るのでしょうか!?
そして、回復しやすい時期などはあるのでしょうか!?
Contents
片麻痺は治る?
脳卒中によって生じた”片麻痺”の程度は、障害部位や大きさなどによって様々です。
また、年齢や基礎的な運動能力などによっても回復の仕方は大きく異なります。
その中で一般的に言われるのは、
麻痺の回復は
“発症から3か月でピークとなる”
ということが定説でありました。
そのため、それ以降のリハビリテーションでは効果が少ないとも言われます。
実際に、急性期の回復の程度に比べると、
経過が経つにつれて、その回復の程度は緩やかになります。
反対に言えば、発症から早ければ早いほど、回復は大きいとも言えます。
これには、
・血腫の吸収(出血部位の改善)
・機能乖離の改善(機能連結する脳機能の停止からの解除)
などの要因が言われており、急性期の自然治癒の要素と言えます。
それでは本当にそれ以降の回復は見込めないのでしょうか!?
脳卒中に関する記事はこちら
→脳卒中といびきの関係は?いびきは発症リスクのある予備軍!
→脳卒中後遺症である片麻痺歩行の特徴って…?
運動麻痺回復のステージ理論
様々な文献や報告がある中で、運動麻痺の回復に関する分かりやすい理論が存在します。
Dwayne (2008)らによる運動麻痺回復のステージ理論では、運動麻痺の回復の段階を3つのステージに分けて述べています。
※やや専門的となります。
【1st stage】(発症から3ヶ月)
急性期の段階は、皮質脊髄路(運動の経路)の興奮性を高めることで、
麻痺の回復が促進される時期とされています。
運動麻痺した上肢や下肢の使用を適切に促進することが麻痺の改善に有効である時期と言い換えることが出来ます。
【2nd stage】(発症3ヶ月から6ヶ月)
次のステージでは、皮質間の新たなネットワークの興奮性を高める時期と言われています。
この時期には、反体側の脳からの抑制が解除される時期でもあり、皮質ネットワークの再組織化を促すことが重要となります。
【3rd stage】(発症6ヶ月以降)
6ヶ月以降も持続して強化される機能は、“シナプス伝達の効率化”であると言われています。
つまり、2ndステージに再組織されたネットワークを強化する時期といえるでしょう。
脳卒中に関する記事はこちら
→脳卒中の後遺症「半側空間無視」とは?リハビリ方法は?
→脳卒中は再発しやすい?再発率は?予防や対策は?
まとめ
片麻痺に代表される運動麻痺などの回復に関しては様々な知見が存在します。
急性期には、自然回復の要素で大幅な改善が見込めます。
しかしながら、やはりその回復は急性期に限定のものであり、それ以降は回復は少ないと言えるでしょう。
ただし、それは自然回復の話です。
運動麻痺回復のステージ理論に基づいて言えば、
単純な四肢の運動の回復には3ヶ月までが重要であることは間違いないです。
しかしながら、それ以降も適切な使用や促通が新たな脳のネットワークの再編や、その強化によって回復し続けることが言われています。
根気よく行う気持ちと、適切な促通の方法が組み合わさったときに、慢性期でも回復の余地があるということです。
脳卒中の治療法に関する記事はこちら
→脳卒中後遺症にボツリヌス療法|その効果や料金は?
→脳梗塞の治療法「t-PA」ってどんな薬剤?その適応は?