「トルソー症候群」とは?癌や脳梗塞との関係は?症状や治療法はある?
「トルソー症候群」
あまり聞き慣れない疾患かと思います。
婦人科系の癌に関わる疾患であり、脳梗塞にも注意が必要なんです。
「トルソー症候群(Trousseau’s syndrome)」とは、
フランスの神経内科医“トルソー医師”によって命名された疾患です。
トルソー症候群は、
“癌の合併症とされる静脈血栓による塞栓によって起こる脳梗塞”
です。
子宮癌や卵巣癌といった婦人科系の癌に合併するとされ、
女性に好発します。
癌治療中に生じる脳梗塞の1/4がトルソー症候群ではないかと言われています。
癌と血栓には非常に密接な関係があり、
トルソー症候群を命名した”トルソー医師”自身も、
この疾患によって命を落としているそうです。
そこで今回は、「トルソー症候群」に関して、癌や脳梗塞との関係、その症状や治療法を解説します。
癌と静脈血栓の関係は?
「トルソー症候群」は、
“癌の合併症とされる静脈血栓による塞栓によって起こる脳梗塞”
です。
癌は、浸潤や転移を繰り返す中で、
同時にムチンやサイトカインといった成分を産出します。
この成分が血管内の壁を傷つけ、
下肢の静脈を中心として“静脈血栓”を形成します。
特に卵巣癌、子宮癌などの婦人科の癌、子宮内膜症などに好発するため、
女性に罹患しやすい疾患です。
別名“エコノミー症候群”と呼ばれる「深部静脈血栓症」に関する記事はこちらを参考にしてください!
静脈血栓が脳梗塞を誘発する?
上述のように、癌の合併症として生じる静脈血栓は、
血管壁から剥がれることで、血管の中を通って脳へ到達します。
脳で血栓が引っかかり血流が閉塞した状態を、
「脳梗塞」の一つである“脳塞栓症”と言います。
このように
“癌の合併症とされる静脈血栓による塞栓によって起こる脳梗塞”
が「トルソー症候群」なんです。
脳塞栓症となると、
そのまま命を落としてしまう場合もあれば、
高率で後遺症を残します。
“片麻痺”と呼ばれる半側身体の麻痺などが代表的な後遺症として知られています。
脳卒中に関する基本的な知識はこちらから
→脳卒中とは?脳梗塞と脳出血とは違うの?
→脳卒中片麻痺|右片麻痺と左片麻痺の違いは!?
トルソー症候群の症状は?
トルソー症候群の症状は、
いわゆる“脳梗塞”の症状と同様です。
・運動麻痺
・感覚障害
・痺れ
・言語障害
・高次脳機能障害
・意識障害
etc…..
塞栓が生じた領域の脳が持つ機能に依拠した障害が生じるので、
その程度は塞栓の場所や、治療開始までの時間などによって異なります。
→脳卒中後遺症である片麻痺歩行の特徴って…?
→脳卒中は再発しやすい?再発率は?予防や対策は?
また、脳梗塞が生じる前の血栓形成の段階では、
急な赤い晴れなどが出現した場合は、静脈血栓を疑いましょう。
血液データなどでは、「Dダイマー」と「BNP」の値が指標となります。
トルソー症候群の治療は?
まずは、トルソー症候群に陥った原因を除去しなければなりません。
“癌の治療”によって原因を断つ必要があります。
しかしながら、癌は簡単に治せるものでもありません。
そこで、血栓を予防する薬が有効となります。
特に「ヘパリン」と呼ばれる物質は、形成されている血栓には無効ですが、
新たな血栓の予防に対して注射によって投与されます。
また、抗凝固薬として有名なワーファリンなどは、
内服薬として使用されます。
ただし、その効果は懐疑的であるとともに、長期的な服用が必要です。
より簡単な血栓の予防法として、
弾性ストッキングの着用なども有効とされています。
まとめ
今回は、「トルソー症候群」に関して、癌や脳梗塞との関係、その症状や治療法を解説しました。
血栓が見つかることで、癌が見つかるケースも少なくありません。
人間ドッグや定期健診など、癌の早期発見・早期治療が、
トルソー症候群を未然に防ぐ予防策であることは言うまでもありません。