脳卒中の後遺症「半側空間無視」とは?リハビリ方法は?
2016/06/19
脳卒中は、運動麻痺や感覚障害をはじめとして様々な後遺症を併発します。
高次脳機能障害の一つに数えられる「半側空間無視」は、日常生活活動を大きく制限するものの一つです。
脳卒中とは、脳梗塞や脳出血、くも膜下出血などの脳血管障害の総称です。
障害を受ける脳の部位や重症度によって多彩な臨床症状を呈し、千差万別のある後遺症を残します。
脳卒中に関する詳しい記事はこちらをご覧ください
→脳卒中とは?脳梗塞と脳出血とは違うの?
→片麻痺|脳卒中後遺症|痺れの原因は?治る?
代表的なものには運動麻痺や感覚障害がありますが、日常生活を自立して行うために厄介な症状として「高次脳機能障害」というものがあります。
高次脳機能障害に関する詳しい内容はこちらを見てください!
→高次脳機能障害とは|失語・失行・失認|リハビリでの回復は
その中でも「半側空間無視」という症状は、自立した生活を行う上での阻害因子となることが多く、非常に厄介な症状です。
そこで今回は、脳卒中の後遺症である「半側空間無視」とはどのような症状か?そして、そのリハビリ方法について解説します。
半側空間無視とは?
半側空間無視(Unilateral Spatial Neglect:USN)とは、大脳でも右半球の損傷によって生じやすい症状で、
損傷した大脳半球と反対側の刺激を無視する症状です。
多くは、左半側空間無視を発症しやすく、左の空間を見えているのに見落とす、左からの刺激に気がつかない状態なんです。
発生頻度は右半球損傷で報告が多く特に急性期では、70〜80%程度、慢性期では、40%前後、左半球損傷による右半側空間無視は 0〜38%といわれています。
ただし、報告によってもその発生頻度は大きくばらつきもあるようです。
脳卒中に関する記事はこちらもどうぞ
→脳卒中片麻痺|右片麻痺と左片麻痺の違いは!?
→脳卒中は再発しやすい?再発率は?予防や対策は?
原因は?
発生原因として明確な答えは出ていないものの、幾つかの有力な説があります。
その中でも、Kinsbourneの説によると…
右脳は左右空間を、左脳は右空間の監視を担当しています。
左脳損傷の場合は残っている右脳が左右両側を監視するために無視は生じませんが、
右脳損傷の場合は左脳が 残るため右空間しか監視できず、左半側空間無視が生じると説明されています。
少し専門的な話になりますが、
損傷部位として報告されているのは、
・中大脳動脈領域の損傷:側頭・頭頂・後頭葉接合部、角回、縁上回
・後大脳動脈領域の損傷
・前大脳動脈領域の帯状回や補足運動野の損傷
・前脈絡膜叢動脈領域の梗塞
・視床損傷
・線条体・内包・外包など穿通枝系の損傷
・テント下の中脳網様体賦活系の損傷
・脳梁損傷
などがあり、多くの部位で半側空間無視が生じる可能性があるのです。
臨床症状は?
漠然と、「左の空間を見えているのに見落とす、左からの刺激に気がつかない状態」と言われてもイメージが湧きにくいかもしれません。
具体的な臨床症状としては、
・顔や目線は常に右に向いている
・左に立っている人に気がつかない
・左側の食事を食べ残す
・左側の障害物や人にぶつかる
・車椅子のブレーキやフットレストも左側の管理ができない
・左の衣服が着れない
・左の道を曲がれない
などなど…
左方向または、左身体に注意を向けることが困難となります。
ただし、口頭で指示したり、左側を気がつかせるような注意を与えると、その場だけは出来ることが多いです。
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半側空間無視のリハビリテーションは?
半側空間無視などの高次脳機能障害は、血腫の吸収など、急性期のうちに人知れず回復することが多いとされています。
しかしながら、慢性期に至っても残存する場合は、治療においても完治させることは難しいです。
それでも、生活指導を含むリハビリテーションなどによって、日常生活活動への復帰も可能となります。
代表的なリハビリテーションの方法には、
・電気刺激療法
・プリズムアダプテーション
・視覚走査訓練
など、半側空間無視そのものに対する機能訓練が実施されます。
しかしながら、個人個人の症状によっては、このような機能訓練が効果を示さない場合もあり、直接的な動作指導や環境調整、家族指導などによって機能の代償を図る方法もあります。
例えば、
・車椅子のブレーキに左側だけ目印を付ける
・左側にものを置かないようにする(ベッドやテレビの位置)
・家族へ障害に対する理解や知識を促す
などなど、方法は多岐に渡ります。
医師や理学療法士、作業療法士などの専門家に相談し適切なリハビリテーションを受けましょう。
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→脳卒中後遺症にボツリヌス療法|その効果や料金は?
まとめ
今回は、脳卒中の後遺症である「半側空間無視」とはどのような症状か?
そして、そのリハビリ方法について解説しました。
運動麻痺はないのに…
歩いたりすることもできるのに…
高次脳機能障害が残存することによって自宅へ帰れないケースも多々あります。
リハビリテーションによって改善を目指すのはもちろん、周囲の人々が適切な知識や理解を持って接することも重要です。